創作 彼らの旅 私の旅 幻のペスカトーレ 「マスターの大事な店と大事なお方ですから、信頼できる人間ばかり選んでいるはずです」すすきのさんはそう言った。今日はパート仕事へ行く日だから、バーへ行く時間は午後の6時頃になる。それより前に店に行ってくれると言うのだ。信頼して良いだろうかと悩... 2023.01.19 創作
創作 彼らの旅 私の旅 店番初日 「数日後には、私よりさらに西の方から一人やって来る予定だそうですよ」「そうですか。今度はどんなお方なんでしょう」「カモシカさんとほぼ同年代だと思うんですけど、一度もオートバイを降りなかった、本物のオートバイ乗りですよ」「それはすごい」すすき... 2023.01.12 創作
創作 彼らの旅 私の旅 旅に出る理由 東北の太平洋側らしい冬晴れのある日、私は仙台港にいた。「いよいよね」「ああ、いよいよだ」沖縄への旅を計画していたマスターは、時間と体力と予算の都合で、名古屋までフェリーで行くことに決めた。日本一周中のとんずらさんとKくんとの合流は、鹿児島新... 2023.01.11 創作
創作 彼らの旅 私の旅 留守番と本音 「なあ、沖縄、行けないんなら、この店たのもうかな」「え?なにそれ」彼が言うには、旅に出ている2週間ほどの間、このバーで店番をしないかということだった。酒もつまみも、私にできる程度の簡単なものに限定して、客が来なくても店にいて水道の水を流した... 2023.01.09 創作
創作 彼らの旅 私の旅 俺も行く 扉を開けてバーに入ると、彼はカウンターの中でほほ笑んだ。「明けましておめでとうございます。今年もよろしくね」「明けましておめでとう。こちらこそ」bar-nの初営業は、2023年最初の金曜日の夜だ。昨年の5月からこの店に来はじめて、今ではもう... 2023.01.07 創作
創作 彼らの旅 私の旅 土砂降りとオートバイ3 2023年1月1日、宮城県の日の出時刻は6時53分。6時過ぎにハマさんのガレージを出た。こんな時こそオートバイで出かけるべきなのだと思ったが、バッテリーは外してあるし、準備が全くできていない。東北の地方都市とはいえ、太平洋岸の南東北は雪が少... 2023.01.05 創作回想
創作 彼らの旅 私の旅 土砂降りとオートバイ2 沖縄本島のメインストリート国道58号を北へ、正確に言うと北東方向へヤマハのSEROW-225を走らせていた。先へ進むにつれ、落ち着かない気持ちになった。頭の中はこれから進む道の先のことではなく、彼の事でいっぱいだった。船の出航時間が気になっ... 2023.01.04 創作回想
回想 彼らの旅 私の旅 土砂降りとオートバイ1 「明けましておめでとう」大晦日から元旦にかけて、私はハマさんのガレージにいた。ラジオからは除夜の鐘の音が鳴り響き、アナウンサーが令和5年の幕開けを告げた。SR400の傍らにリクライニングチェアを置き、椅子の前に置いた灯油ストーブの上には薬缶... 2023.01.03 回想
創作 彼らの旅 私の旅 沖縄での出会い 「ハーイ!」「お、めずらしく連日のご来店ですな」「仕事も年末の休みに入ったし、なんとなくまた来たくなっちゃって」「はい、お土産。お客さん来る前に食べちゃって」「寿司か。ありがとう。俺の好きな貝づくしだな」「それに、夕べの話の続きも聞きたくて... 2022.12.31 創作回想
創作 彼らの旅 私の旅 ボトルキープは再会の約束 「ねえ、その、ミリオンダラーベイビーってなによ」「あ、これ?うちのお客さんだけど」「それはわかるけど、そのネーミングが気になるのよ」ミリオンダラーベイビーと書かれた小さなプレートがぶら下げられたボトルは「山崎」だった。「たしか映画のタイトル... 2022.12.29 創作