あおいしか

創作

彼はそこにいた natsu

「会って来たのよ」「誰に?」「スーパーウーマン」「なんだそれ」外は曇り空。日本中のどこよりも、いや北海道の一部と同じくらいこの街の夏は涼しい日がたまにある。店のドアが開放してある。いい風が入るのだと彼は言った。SNSで知り合った女性がいる。...
創作

彼はそこにいた はーれーちょびっとそん

「夏になるとさ、沖縄を思い出さないか?」ソーミンチャンプルーを目の前に差し出しながら、彼は言った。懐かしい料理だ。物凄くシンプルだが、喉が鳴るほど美味い。沖縄を旅した時に、あまりの質素さに呆れながら食べ、その美味しさに感動すらした料理だ。「...
創作

彼はそこにいた 2台のカワサキ

「とんずらさんには、この街に親友がいたんだ」「二人ともダブサンに乗っていたそうだ」「650RS W3ね。彼のオートバイ・・・の」彼はカウンターの中から手を伸ばして、私の前に小皿を置いた。今日のナッツはトリュフ風味。とても美味しい。もう一皿は...
創作

彼はそこにいた とんずら114

「とんずらの由来は何なのですか?」私は、スツール2つ向こうの男の前に置かれたボトルのプレートを見ながら、誰にともなく質問を投げた。「これですか、私が乗っているバイクの名前が由来なんですけどね」白髪混じりのリーゼントの男は、こちらを向かずにぽ...
創作

彼はそこにいた 雨

「雨だね」「ええ、雨だわ」「もう梅雨入りかな」「そろそろね」「雨は嫌いではない」「私もよ」店のカウンターには珍しく花が活けてあった。紫陽花の一種だろうか。目の前にはもう空になりそうな欅のボトルとお通しの小皿がある。今日のお通しは、ガーリック...
創作

彼はそこにいた 野性の勘

目の前にアスパラのベーコン巻きの乗った小皿とツブワサの小鉢が並んだ。「今日のお通しは二つなのね」「いや、ツブはサービスさ」「漁師の常連に、売り物にならないツブを大量に貰ったんだ」「ツブ貝には毒があるのですってね」「おう、よく知ってるね」「貝...
創作

彼はそこにいた またいつか

「またいつかなんて言葉は私の辞書には無いのよ」「ほう」「行きたい時に行きたいところへ行かないと、やりたい時にやりたいことをやらないといけないのよ」「なぜ?」「またいつかなんていうチャンスは無いからよ」前回bar-nへ行ったのは2週間前だった...
創作

彼はそこにいた 正しき姿

「オートバイ乗りって、バイクが好きだ、いつでも走りたいって言うじゃない。モチベーションを保つのって案外大変だと思うのだけど」「オートバイ乗りは特別なんだ」「君だってあの頃はそうだったんじゃないのか?」一週間後、またあの店へ行った。いつも会話...
日記

千里浜(SSTR2022応援と旅)

何を求めて千里浜まで行ったのか。私は出発の数日前に現地の天気をチェックして、宿と高速バスの予約を入れた。ぎりぎりまで迷い、そして決めた。最初に決断したのは、数か月も前にSSTR2022の開催が決定した時だったのだが。そして、SNSで知り合っ...
創作

彼はそこにいた 情熱と衝動

「で、なんで一年に一度なのさ?」「そうね、最高な季節とお天気、そして情熱と衝動が一致する日が一年に一度しか無いのよ」「ほう。難しい話だな」「難しいことなんてないのよ。オートバイに乗る人なら無意識に知っていることよ」再び彼のバーを訪れたのは、...