バイク再び その一(Mar 15, 2021)

 

二〇一九年九月、意を決してヤマハの大人のバイクレッスンへ参加した。まともにバイクに乗ったのは、二十数年ぶりだ。

 

バイクを手放してから、ふと思いついてはネットで検索して知っていたバイクレッスンだ。初心者でもOK、ご無沙汰でもOK、手ぶらでOK、年齢制限なし?という点に惹かれていた。

 

関東から帰郷してきて七年め。宮城県にはスポーツランドSUGOがある。そこが会場。しかし、交通の利便性は最悪だ。

 

身内にも友人にも内緒で参加する自分には、送ってくれる人間も自分の車もバイクも無い。おまけにシャトルバスも無ければ、指定時間に現地まで行ける公共交通機関も無い。

 

唯一思いついたのがタクシーだ。最寄りの駅まで電車で行き、そこから現地のタクシーで行く。事前に往復の予約を入れておいた。タクシー代は片道だけで、温泉湯治二食付きくらいのお値段になる。客の少ない土地で、ドライバーには喜んでもらえた。

 

タクシー代がかかってもいいと思った。ただバイクにもう一度乗りたかった。だから惜しくはなかった。(というのはちょっと嘘)シャトルバスくらい出せよSUGO!というのが本音ではあった。

 

しかし、実際のところ、参加者の誰もが自家用車、あるいはバイクで来ていたので、不便だと思う人は自分以外いなかったようだ。

 

前置きが長くなったが、不安ながらもなんとか無事レッスンは終わった。Uターンが相変わらずできなかったが、気持ちよく走る感覚を取り戻した瞬間もあった。何よりも、とても楽しかった。

 

インストラクターたちは、皆好きなバイクの仕事をしている人たちらしく、笑顔の素敵な人ばかりだった。教習所の指導員たちもそうだったな。

 

参加者にはスタイルがかっこよく決まった若い人たちが多かった。立派なバイクも持っていたりする。だけど、皆一人で走るのが不安だと言う。本当にもったいないなと、最高齢?の自分は思うのだった。

 

とにかく走れ、エンストしても転んでも、辛くても苦しくても走るのだ。そうすれば気が付くと楽しくなっている。と、心の中で熱く語っている自分がいた。

 

その後、ヤマハさんから勧められたレンタルバイクを利用するにはどうすれば良いかを考えた。買うこともチラッと考えた。まだ乗れるな、ちょっと自信がついたのだろう。

 

買うならセローか。ネットに出てくる情報では、やたらに評判が良い。自分にとっても二台目のバイクがセローだった。あるいはSRか。スタイルが良い。短いツーリングには最適かもしれない。

 

しかし、その二台とも、生産終了となる。ヤマハさんは何を考えているのだろうか。三輪車は単車ではないと思うのだが、そういう方向に一生懸命になっているようだ。

 

レンタルバイクのあるヤマハのショップを検索すると、交通量が半端ない四号線バイパス沿いにショップがあった。いきなりバイパスに走り出すのは無理だろう、そもそもいきなり一人でツーリングは無理だろうとしか思えない。

 

マシーンに慣れる場所と時間が必要だ。できれば、見守りをしてくれる誰かの存在が必要だ。知り合いの中にはバイク乗りの現役はいない。

 

ネットで探してみたが、サポートをしてくれるような人の情報は無かった。一時盛り上がってきたかと思えたバイクブームは去ったのかとも思えた。

 

そうしているうちに冬が来て、コロナ禍がやってきた。生きるのが困難な猛暑もやってきた。バイク熱は一気に冷めて、ほぼ忘れていた。Gotoを利用して何度か一人旅をした。そしてまた冬が来て年が明けた。

 

そんな時に一通のメールが入った。ヤマハさんから、大人のバイクレッスン参加者対象の、グループインタビューの募集だった。

 

報酬が目にとまった。いいなあ。一日考えて応募した。気がかりだったのは、レンタルバイクのチケットもいただけること。

 

乗るのかなあ自分。乗らなくても報酬もらえるしなあ。まあいいか。とあまり考えこまずに応募してみたら当選した。

 

自由に会えなくなった友人たちと、オンライン飲み会をしたくてWEBカメラを買ったのだが、誰も話に乗ってこない。今回のインタビューで役に立った。

 

三月初めにインタビューは無事終わった。いや、無事と言えるだろうか。回答が期待に反していた面も多々あったのではないか。

 

バイクに乗っていて良かったこと、という質問に、私は命の大切さを知ったというようなことを答えたが、期待されていたのは、例えば北海道の大地を地平線に向かってどこまでも走り続けた思い出が素晴らしかったとか、そういうことだ。

 

バイクで走り終えて命のことを考えたり、未知の路地に入り込んで人生について考えたりとか、そんなバイク乗りの時代はとっくの昔に終わっていたのだ。

 

だから、片岡義男はバイク小説の続編を書かずに辞めてしまったのかもしれない。いや、昔から自分のような者は少数派だったのか?

 

明るく楽しいだけのバイクライフには、あまり興味がない。そもそも楽に乗れるのがバイクの楽しさではないと思うのだ。

 

危険だし、難しいし、あえて乗る必要はない。だけど、それらを超える素晴らしい何かがあるのだと思う。

 

そして今、いただいた報酬をヘルメットとグローブを買う資金の一部に充てようかと思いつつある。

 

バイパス沿いのショップから、練習しながらゆっくり走れる道を地図で探したりしている。バイクはセローがいい。

 

ショップへ行くには電車と徒歩か、自宅から自転車で行くか。走り疲れた帰りに長い上り坂はさすがにきついか。

 

時期はいつがいいか、どこへ行こうか、季節によってはライディングジャケットも必要だろうか、などとネットを利用しつつ考えている。

 

つい最近は、ツイッターで何かに挑戦する女性に五万円をくれるというので応募してみた。挑戦の内容には、二十年ぶりにバイクでツーリングすることと書いた。当選したら、ヘルメットとグローブとジャケットを買おうか。

 

もう一度走る、その日まで、この記録を続けるつもりである。

 

続くといいね。

 

★ヤマハ 大人のバイクレッスン

コース内容:ヤマハ バイクレッスン | ヤマハ発動機株式会社
初心者、リターンライダーを対象としたバイクスクールです。

 

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