人生最初のオートバイに、オフロードバイクを選んだのは、ちゃんとした最終目的があったからだ。
林道を走りたかったわけではなく、モトクロスをやりたかったわけでもない。
最終的に大型二輪免許を取得してハーレーに乗るためだった。
当時夢中になって読んでいた雑誌に、三好礼子だったかヒロコノのひろ子さんだったかが、書いていた。
オートバイの運転がうまくなりたかったらオフロードバイクに乗るといい、と。
片岡義男の書くことをいちいち真似したりしていた自分は、彼女たちの言葉にも素直に従った。
一台目に選んだのは、YAMAHAのDT-200。
モトクロスをやっているバイク屋を選んで買いに行ったら、お勧めのバイクがそれだった。
地方とはいえ、都会に住んでいた自分が一番困ったのは、身近なところに練習場所が無いことだ。
ある日、国道を走っていて見つけた河原で練習することにした。
大き目の岩や石がゴロゴロしていた。自信は無いけど、とにかく走ってみた。
そのうちぬかるみに後輪を取られ、抜け出そうとするほどにはまり込み、仕舞いにはオートバイだけで立つほどに完全に後輪が地面に入り込んでしまった。
力を込めて引っ張っても押しても倒そうとしてもダメだった。
携帯電話の無い時代のこと。バイクをそのままにして公衆電話を探しに行くか、どうしたものか。
途方に暮れていると、声がした。
遠くから見ていたのだと男性は言った。バードウォッチングをしていたのだそうだ。
「このあたりには野鳥の卵があるから、怒り心頭で見ていた」
「どうしようもない様子を見ていられなくて来た」
そう言った。
かなり真剣に怒られながらも、何とか助けてもらった。
その後、河原で練習することはやめた。
かなり昔のことだけど、憎むべき相手を良心で助けたその男性に敬意と感謝を。
★写真は、当時のもの。名取川の河原。ポジフィルムに光を当ててコンデジで撮ってみたら、こんなふうに写りました。使えますね。
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