リーンイン

(写真はイメージです。撮影は私)

20代の初め頃、夢中で読んだ本に背中を押され、衝動的に二輪の免許を取りに行った。

 

自転車に乗れるようになって2年目のこと、そりゃあ当然うまく乗りこなせるわけがない。

 

そんな女子に教官は怒鳴る。

 

「もっと倒せっつーの!!」

 

八の字をうまく回れない自分にも教官の言葉にもムカついて、思い切りリーンインしてアクセルを開け、くるくると回った。

 

地面が斜めになって間近に見えた。もう死んでもいいぞ、クソってな感じだ。

 

目が回りそうになりながら聞こえたような教官の呟く言葉。

 

「死ぬなよ・・・」

 

その声は現実だったのかどうかわからないけれど、今思い出しても、冷たさとは反対の響きをもっていた。

 

2度目の卒研で合格して教習所を去る日、教官たちの顔は妙に緩んでいた。

 

教える人ではなく、オートバイ乗りの仲間、そんな雰囲気と別れの挨拶だった。

 

怒鳴り散らしていた嫌なやつらが、はにかんでいた。

 

幸か不幸か、公道に出てからはそういう走りをしたことがない。

 

それどころか、クラッチレバーを握りっぱなしで下りカーブに突っ込んでいくことが何度もあった。

 

そのほうがよほど危なかったかな。

 

 

 

 

 

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