「こんばんは・・・」
「お、来たな。今夜も俺のおごり?」
「ちゃんと払うわよ。水と焼きそばでお願いします」
「おや、飲まないの?」
「お小遣い無くなるし。もうすぐ北海道じゃない!」
「しかたねーな・・・ジンソーダでどうだ、俺のおごり」
「やったー!!!さすがマスター。ほんといい男よね~」
「今日もぎりぎりで千里浜は晴れたわね」
「おー、そうだな。あの浜は特殊だよ。雨とか曇りかと思っても、夕陽の時間にはちゃんと晴れたりすることが多いんだ」
「すすきのさんは先週末、無事完走。夕陽も見れたし、反省会で大盛り上がりだったそうだ」
「もう何度目なのかしら、すすきのさん。何度参加してもやめられない楽しさがあるって言ってたわ」
「ヒーローさんは今日、無事完走したそうだ。出発は雨、ゴールは夕陽が見れたらしい。雨の日ってさ、かなり精神力が試されるんだよな。それも出発時の雨ってさ」
「そうね、行く先の希望が見えない気持ちになるわよね。でも結果良ければ万事OKよ。感動も倍増なんじゃないかしら」
「そういえば、常連さんの3人組はいつ出走なの?」
「参加は2人。今週末イベントのある日だそうだ」
「たしか、翌日もイベントの日なのよね」
「ああ、完走できるか不安だとも言ってたけど、すげー楽しみにしてるみたいよ」
「どこから出発するのかしら?」
「無難に地元からだそうだよ。新港のフェリー埠頭。とは言っても、そこから千里浜行くには高速使って7時間ちょい。下道だけで11時間ちょいかかる」
「宮城県の日の出が6時50分頃で、千里浜の日没が午後7時頃だから、約12時間か?」
「下道で順調に走れたとして、ぎりぎりな感じね」
「そう、走れなくはないギリな距離。彼ら初出走だから順調にいくとは思えないしな」
「そうなの?」
「普段から長距離のツーリングとかしないやつらだから、ちょっと心配なんだ」
「まあ、参加することに意義があるから、いい体験にはなるはずよ」
「ルートは?」
「Googleマップに従うらしいぜ。113号線で山形横切って新潟から海岸に沿って富山、石川。まあ、素直なルートではあるけどな」
「SSTRは参加しないと本当の感動は得られない気がする」
「だろうな。システムとかSNSとか現地のライブ動画見て応援してても興奮するけど、泣くほどの感動は参加者だけだろうな」
「いつか行ってみる?カモシカくんも」
「う~ん、時間に追われて走るのって性に合わないっていうか、焦りが出ると危険というか。下りカーブでクラッチ握りっぱなしになっちゃったり、シフトチェンジが変てこりんになっちゃたりするのよね」
「人間、焦ってもまたその先まで進むとさ、無意識に身体が勝手にうまい具合にバイク走らせたりするんだぜ、ほんと不思議なんだけどさ」
「あ、なんかわかる気もする。気づくとちゃんと目的地に着いてるけど、どうやって運転してきたか思い出せない時ってあるわよね。さっきの信号青だっけ、赤じゃなかったっけとか」
「俺たちの知らない身体の不思議ってのがあるんだろうな」
「そうね、人間て使ってない能力がまだまだたくさんあるらしいから」
「そういう意味ではバイクに乗るってのは、忘れてた何かを使うきっかけにはなるかな」
「そうね。乗らなければ使わない能力、けっこう使うものね」
「ごちそうさま。今日の焼きそばも不動の美味しさでした」
「え?もう帰るの?」
「うん、なんか眠くなってきちゃった」
「そっか、俺も早仕舞いするかな」
「じゃあ、またな。良く寝ろよ」
「ええ、またね。良く寝るわ」
つづく
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