彼らの旅 私の旅 とあるオートバイ乗りの場合 その1(創作です)

「あの、し、社長、や、休みが欲しいんですが・・・」

「え、こないだ連休あげたわよね?」

「え、ええ、そ、そうでしたけど・・・」

「なに、今度はどこ行きたいの?」

「あ、あの、ほ、ほ、ほ、かいど」

「え?」

「ほ、北海道です!」

「北海道なんてあなた、2~3日じゃ行ってこれないじゃない」

「無理ね、忙しいんだから」

「じゃ、じゃあ、て、定年退職します・・・」

「は?うち、定年無いのよね。死ぬまで働いてもらうわよ」

「え、あ、有り難い話ですが・・・や、休み・・・」

「あなた、うち辞めたら仕事無いでしょ?どうするの?困るのはあなたなのよ!・・・もう、しょうがないわね。10日もあればいいのかしら?」

「え⁉そんなに?・・・よ、8日でいいっす」

「あ、そ、じゃあ8日ね。で、いつから?」

「あ、あの、明後日から・・・」

 

というわけで、俺は奇跡的に北海道へ行けることになった。言ってみるもんだ。ダメもとで既にフェリーの予約は確保していた。

 

しかし、もったいないことをした。社長は10日間の休みをくれると言うのを、俺は急に怖くなって8日でいいととっさに言ってしまったのだ。

 

まあ、いいさ。舞鶴港出航は23時50分だから、仕事を定時で切り上げても、突っ走れば乗船時間に間に合うだろう。フェリーで移動が21時間。久々に爆睡できる。

 

帰りもフェリーで寝て帰るとして、フェリー移動を除いても6日間は自由に走れるわけだ。この自由は、人生何度目だ?いつぶりになるんだ?

 

3日間の着替えとキャンプ道具、いつものツーリングと同じ旅支度に、防寒ジャケットと新しく買った北海道のツーリングマップルを足して準備は完了だ。

 

嬉しすぎて涙も出やしない。

 

つづく

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