彼らの旅 私の旅 次なる旅の計画(創作です)

 

「ねえ、そういえば、とんずらさんとKくんはどうしたのかしら?キャンプ場にも来なかったし」

「ああ、キャンプ場には行けないとだけメッセージが入ってそれきりだな」
「せっかく日本一周走破のお祝いしたかったのに・・・」
 
目の前にはいつもの赤ウィンナーが3匹乗ったナポリタンとハイボール、お通しの枝豆の小鉢。
 
今夜のウィスキーは、厚岸ブレンデッドウイスキー大暑だ。北海道ツーリングの土産にマスターが買ってきた。
 
9月になってもまだ最高気温が30度を超える日が続いている。暦はとうに秋を向かえ、夜には秋の虫たちが鳴いているというのに。
 
そういうわけで「大暑」がまだ美味しく感じられる。
 
大暑の香りは、黒糖、ピンクグレープフルーツ、オレンジ、シリアル、ハチミツ。味わいは
オレンジ、レオモン、ハッサク様の酸味と甘味、潮、醤油様の塩味、レモングラス、セージ様スパイシー。
 
余韻は、ホワイトペッパー、ライムピール、チョコレート様の甘味。タイプはブレンデッドウイスキー、原材料はモルト&グレーン。(堅展実業株式会社 厚岸蒸溜所HPより)
 
「こんばんは」
「いらっしゃ・・・お?」
「あ、噂をすればKくんじゃない!」
 
「あ、どうもお久しぶりです」
「ちょうど噂してたところなのよ。キャンプ場でも会えなかったし」
 
「すみません。休学中の大学の急用とかいろいろ重なってしまって、キャンプ場集結直前に急遽こっちに戻ったんです。とんずらさんも神戸に戻る用事ができちゃって小樽からフェリーに乗って行きました」
 
「そうなのね。ちょっとというか、かなり心配しちゃった」
「実は俺も、日本一周走破のお祝いを持参してたんだけどね」
 
「詳しくお知らせすべきだと思ったんですけど、帰ったらここに来て直接話そうと思って」
 
「そっか。でも2人とも無事で良かった」
「だな。あらためて日本一周走破、おめでとう!」
「おめでとう、Kくん!」
 
「実は、その先の話があるんです」
「え?なになに?」
 
「僕、今度はハーレーに乗ります」
「え?W650は降りるの?」
 
「いえ、なんとか2台維持するつもりです。Wはオヤジの形見ですし」
「かなり金かかるだろうな」
 
「そうなんですけど・・・実はオヤジが残してくれた遺産もありまして。あとは大学に戻って研究の傍らバイトに励みます」
「それは忙しくなりそうだ」
 
「とんずらさんと計画してるんです。2年後にアメリカ横断しようって。ハーレーで」
「そうなの⁉すごいじゃない!」
「おお、すげーな。男の夢だぜ」
 
「アメリカと言いましたが、スタートはカナダなんです。宮城県山元町から津波で流されたハーレーが打ち上げられた浜にどうしても行きたくて。それから、ゴールはミルウォーキーのハーレーダビッドソン社の博物館の予定なんです。津波ハーレーが展示されている」
 
「もう、計画が具体的になっているのね。素晴らしいじゃない」
「俺まで楽しみになってきたぜ」
 
「Kくんはいつものコーラかな?」
「いえ、ビールをお願いします。あと焼きそば」
 
「おお、なんだ、飲めるようになったのか?」
「ええ、とんずらさんには多大なる影響を受けました」
 
「じゃあ、あらためて乾杯しましょう!とんずらさんとKくん2台のW日本一周走破祝いと、次なる旅、アメリカ横断を祝して乾杯!」
「カンパーイ」
「カンパーイ」
 
「ところで、ハーレーは何に乗るの?」
「ええ、ナイトトレインにしようと思ってます」
「津波ハーレーと同じ・・・」
 
「そうです。旅の途中にとんずらさんからその話を聞いて、すげー感動したんです俺」
「博物館に展示してあるボロボロのナイトトレインの写真見て、あんなにボロボロになってもすげーカッコいいなと思って」
 
「あ、でも実際にアメリカで乗るのはレンタルですけどね」
「まあ、そうだろうな。旅する前にこっちでハーレーに慣れとくってことか」
「ええ、そんなところです」
 
「なんか、俺も行きたくなってきたぜ。ハーレーにも乗りたいしなぁ」
「また始まった。夢見るマスター。ってか、ほんとに実行するタイプだからこわいわ・・・(長期留守番は嫌よ・・・)」
 
 
 
つづく
 
 

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