妄想ショートショート「漢に二言はない」

いつものイケメンコンビニ。早朝6時半。

 

トイレを借りて、レモン野菜ジュースを買う。広い駐車場で居場所に困りながら、バイクから少し離れたフェンスの前で飲んでいる。

あ、カワサキ!ご機嫌に飛ばしてる。

あ、チラッとこっち見た?

いつもながら空が広くて、道の向こうの田んぼ越しに小さな赤い鳥居が見えている。

坪沼八幡宮だ。まだお詣りしたことがない。

え?カワサキ?戻ってきた?

は?隣かよ・・・

私のバイクのすぐ隣にレトロなカワサキがとまった。

え?こっち見てる・・・やば

私はまだ、バイク乗りとリアルに話をしたことがない。少なくとも、再びバイクに乗り始めてからは。

だって、中古バイクを買ってから、まだ1ヶ月しか経っていないのだ。しかも、早朝から昼前までしか走らない。それも、主に平日だ。だれが、のほほんとツーリングなどしていようか。

来た・・・

カワサキ乗りは、ヘルメットをとりながら近づいてきた。

あ、やだ、おとこまえ?・・・

「ちーっす!シカさんすよね?」

「え?あ、はい、そうですけど・・・」

「あ、いつも見てます」

「え?あ、あの、何を?」

「ツイッターっすよ」

「あ、そうなんすね・・・おはようございますぅ」

「じゃあ、行きますか!」

妙に爽やかにカワサキ乗りは言う。

「え?どこへ?」

「え?もちろん、寿司食いにっすよ!」

「え?寿司?なんで?しかも、こんな朝早くに?」

「やってますよ!塩釜なら」

「あー塩釜ね~!ここから反対方向(汗)・・・」

「じゃ、行きますか!」

「いやいやいや、ついて行ける気、まったくしないんですけどぉ・・・」

「ゆっくり走るから、大丈夫っすよ!」

「えー、ほんとに行くの?」

「もちろん!漢に二言は無いっす!」

さてさて、その後、2台のオートバイはどうなったのか。この先はご想像にお任せいたしましょう。

漢(完)

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