「あ、いた!こんばんはカモシカさん、お久しぶりです~」
「あ、ソーダちゃん、元気だった?」
「最近カモシカさん、バーに来てませんよね?」
「うん」
「金欠ですか?」
「それもあるけど、朝活よ」
「朝活ですか?」
「そう。暑くなってきたから夜明け前に走り出して、気温が上がる前に帰ってくるショートツーリングをお休みごとにやってるの」
「そうなんですね」
「うん。だから、お休みの前日には早く寝るからバーにも来れないのよ」
「それは寂しいです」
「でもお休みの日が雨だったら前の日の夜にはバーに来るわよ」
「それより、ソーダちゃん北海道ツーリングがもうすぐだけど、元彼との約束あったわよね?」
「そうなんですよ。北海道で再会しましょうっていう約束があるんです」
「また仲良くなれるといいわね」
「実は気が重いんです。はっきり言うと会いたくないっていうか・・・」
「え、そうなの?」
「おふたりさん、話は尽きないようだけど、何飲むよ?今日のつまみは、いぶりがっこポテサラだぜ」
「それ、いい!ぜったい美味しいでしょ」
「腹へってたらパンもあるぜ、ポテサラコッペとかどおよ?」
「あたしは季節の果汁100%のチューハイお願い」
「わたしは・・・クリームソーダハイでお願いしまーす」
「なにそれ?クリームソーダにお酒入ってるわけ?」
「マスターが私のために開発してくれたんです。美味しいですよ」
「わたし、北海道へは行くけど、彼には会いに行かないつもりです」
「なぜ?彼はずっと待ってそうな気がするよ」
「ええ、ちょっと前に街で見かけたんです。綺麗な若い娘と歩いてたんですよ、仲よさそうに」
「ってことは、ソーダちゃん的にはまだ彼のこと好きだったってこと?」
「好きっていうか、今度こそいい友達になれそうな気がしてたんです、恋愛感情なしで」
「じゃあ、彼に恋人がいてもいいんじゃない?」
「それが、そういう気持ちになれなくなっちゃって」
「ああ、きっとまだ好きだったのよ、彼のこと」
「そうなんでしょうか・・・」
「難しい話だな。それにしても、カモシカくんの浮ついた話って無いのかね」
「マスターったら余計な話を」
「そうね、浮ついた話じゃないけど、びっくりした話ならあるわよ」
「なになに?」
「姪っ子が突然言い出したんですって、バイクの免許を取りに行くって」
「ほう、それはそれは目出度い」
「そうなのよ。昔の自分と重なっちゃってついウルウルしちゃったわよ」
「同時にね、やっぱりすごい心配にもなったわけ。怪我とか事故とか最悪の事態とか。うちの母なんて、話が支離滅裂で現実を受け入れらなくなってる感じだった」
「まあな、俺も娘がバイク乗るって言い出したら、喜べないかもしれない」
「ほんと、やっかいな乗り物よね」
「そうですね、私もそう思います」
「まあな」
「一度その魅力に取りつかれたら、何があっても身体に沁みついてしまう。バイクってそんな感じよね」
つづく
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