Kくんの話を聞いてから、私はどうしても山元町のTSUNAMIハーレー展示館へ行きたくてたまらない気持ちになった。
あまりの暑さで体力が衰えていたけれど、仕事の休みの日に常磐線に乗って行ってきた。産直市場の広い駐車場の片隅の小さな小屋に、被災した2台のハーレーがひっそりとたたずんでいた。
小屋の中にはカナダに漂着したナイトトレインの写真が何枚か展示されており、インターネットで見たその姿とはまた異なるインパクトを受けた。
ハーレーダビッドソン博物館に展示されているナイトトレインは、今でも海塩による腐食が続き、変化し続けているという。
その写真は、まるで死んだ人間の肉体が朽ちていくかのようにも見えるのだった。
いつか完全に朽ち果てる時が来たら、きっと自然に土の中に帰って行くだろう、そんなふうにも思えるのだった。
オートバイというものは、そもそもそうでなければいけないと、私には思えた。
生きたライダーを乗せ魂を運ぶ乗り物、もはやそれは機械ではなく、身体の一部とでも言いたくなる。だから、死んだ後には土に帰るのが最もふさわしいと思うのだ。
アメリカか・・・いいなあ。でも限りなく遠い。それ以前にハーレーに乗ることがもっと遠い。技量、体力、そして経済力。とんずらさんとKくんの旅の計画と報告を楽しみに待つことにしよう。
展示館のある敷地には、山元町農水産物直売所「やまもと夢いちごの郷」がある。そこで販売されている津波ハーレーのTシャツの表には「LIM」と大きな文字が記されている。LIFE IS MIRACLE の頭文字を合わせたものだ。
Tシャツを製作した山元町は、日本からカナダに漂着したハーレーの奇跡に倣い「人生は奇跡の連続である」というメッセージを込めているとのことだ。
半そでで4000円という価格に躊躇したが、3度売り場をうろついて、ハーレー展示館を見てまた戻ってきて、迷いに迷ったあげくクレジットカードで白いTシャツを買った。
背中には、メッセージと共に日本からカナダまでの地図と津波ハーレーの軌跡が描かれている。
年配女性としては着て歩くのにちょっと躊躇するが、着ると勇気を貰えるお気に入りのTシャツになりそうだ。
自分にも奇跡は訪れるだろうか。何度も何度も波のように繰り返し。
つづく
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