「こんな暑い夏の夜はモヒートね!」
「あるよ~」
「さすがマスター!」
「はい、美味いよ」
「え?缶入り?手作りじゃないの?」
「まあ、飲んでみてよ」
「あら、美味しい」
「だろ。はい、アペリティフ。いつもの倍の料金だけど美味いよ」
「え?なに?お洒落~」
「エビのカクテルとエビとアボカドのサラダ、バゲット、3種のチーズ、生ハム。そして赤ウィンナーのケチャップ炒め。どおよ」
「うん、なんか路線違うけど、どれも美味しそう」
「ところで、北海道ではどこをどお走ったの?」
「カモシカくんはどうよ?」
「旭川でハマさんに会って、ソーダ水ちゃんと別れ、1人でそばを食べて白い道を走って、海を見続けて、どこまでもまっすぐな道を走って、やたらに眠って、キャンプで美人ライダー小間使いになって足見せて、お花畑やん、あと覚えてないの・・・」
「なんだよ。せっかく北海道まで行ったのに。カニとかホタテとかラーメンとか男とか無いの?」
「そうそう、食べた食べた。もう毎日現地の産物を格安でたらふく食べたわよ。思い出せないくらい」
「もう、そうやって過去を忘れて前に前に進んで行くんだろうな、君は。俺なんて、過去の思い出にどっぷり浸ってなかなか抜けられないんだぜ」
「そうなの?ここ最近、すっきりしてるように見えるけど」
「ところでソーダ水ちゃん来てる?」
「そうだな、前ほど来なくなったな」
「やっぱり。なんか、北海道で出会っちゃったらしいのよね、いい人と」
「そうなの?こっちの人?」
「うん。同県人で海沿いの町に住んでるらしいことだけ知ってる」
「キャンプには来てたのか?」
「うん、それがね、ソーダ水ちゃんが誘って、ちゃっかり参加してたらしいわ」
「なんだよ、紹介してくれてもいいのにな」
「で?あんたはどうよ」
「え?何が?」
「出会い、さ」
「無いよ」
「そうかなあ」
「何で?」
「キャンプでチラッと聞かれたんだ」
「何を?」
「あの人がカモシカさんですかってさ」
「えええ?誰よ、それ」
「つわものさんの旧友らしい」
「え?だれも何も言わなかったじゃない」
「SRしか乗らない変わり者、いや一途な男らしいよ」
「えええ、うってつけじゃない。SRに乗るにはSRに詳しい相棒がいるとベストなのよ」
「なんか、どこかで一瞬すれ違ったらしいとか言ってたぜ。1人で宙に浮いてたとか」
「え?それって白い道じゃない?そういえば、一つ目の細身のバイクってSRだったのかも」
「彼のおかげでこの世に戻ってこれたのよ」
「なにそれ。死にそうだったのか?」
「白い道走ってるうちに意識が遠くへ行ってしまいそうだったのよ。それを引き留めてくれたのが、すれ違ったライダーの笑顔だったってわけ」
「おお、それ、運命の出会いってやつじゃね?」
「そうかしら。だと素敵よね」
つづく
※モヒートはまだ飲んでないので、味は不明です。
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