「あの、こんにちは!この先は通行止めとか無いですか?がけ崩れとか未舗装の部分とかは無いですか?」
「なーんもだ。心配ないよぉ」
畑仕事の帰りの風貌のお爺さんは、満面の笑顔でそう言った。
「つーりんぐかい?どっからきた?ほれ、こいずもっていげ」
そう言ってお爺さんは新聞紙にくるまった何かをくれた。その場で開いて見てみたら、大粒のイチゴが10粒ほど入っていた。
「え?いちご?」
「んだ、留萌の名産なんだ。これで今季最後だ。うめど」
「ありがとう。いただきます」
「したっけなー」
バックミラーにはいつまでも手を振るお爺さんが映っていた。こういうシチュエーションに私は弱い。
私の旅はいつもこんな感じ。紙の地図と、地図を見てもわからなくなってしまった時は、容赦なく通行人や車やオートバイを捕まえて道を聞く。
グーグルマップなどのナビで未舗装路とか獣道へ導かれることもあるらしいけど、私の場合はほぼ確実に安全に行きたい場所へ続く道を知ることができる。
そして何より、地元の方言を生で聞ける機会でもある。その温もりにふいに涙が出そうになったりもする。お爺さんと別れてオートバイを走らせながら、案の定、私は少し泣いた。
人との触れ合いが極端に少ないと、ほんのわずかな人との接触で感動してしまうのかもしれない。うってつけの低い防潮堤があった。オートバイを止めて、そこでいちごを食べよう。
なんでこうも美味いかね。旅先で食べる地元の物って。しかもタダで貰ったものほど美味いのよね。
ほんと、昨日のいちごは美味しかったわ
さあ、今日は白い道よ ホタテの道よ
こけないかしら 大丈夫かしら
ほっかいど~!ここはホントに北海道なのよね~
北海道と言えば中島みゆき
みゆきと言えば・・・
一人上手と呼ばない~で一人が好き~なわけじゃないのよ♩
え?好きだけど1人・・・
えっとじゃあ・・・
まわる~まわる~よ時代はまわる~喜び悲しみ繰り返~し♩
今日は倒れ~た旅人たち~も生まれ変わって歩きだ~すよ♩
倒れちゃ困るのよね・・・
あとなんかなかったかな・・・
道に倒れて誰かの名を~呼び続けたことがありますか~♩
だから、倒れちゃいかんて・・・
空と君との間には今日も冷たい雨が降る~♩
いま雨は降らんでええって・・・
風の中のす~ばる~♩
砂の中のぎ~んが~♩
みんなどこへ行った~見送られることもなく~♩
そういやみんなどこ行ったのかな?・・・
意外と会わないものなのね
いくら北海道が広いとはいえどこかで会ってもおかしくないと思うんだけど
ソーダ水ちゃんは順調に走ってるかしら
あの様子じゃ心配ないわね
とても綺麗に無理なくSR400を乗りこなしていたから
でも地図読めてなかった感じもするわ
何でもスマホ任せで
ちょっと不安~
マスターはどこ行ったのかしら
ミリオンさんは?
ミリオンさんたら海が怖いんだって言ってたのに
あえて海沿いを走ることにしたんですなんて言ってたけど
あーお腹空いた
やっぱり宿の朝食は食べてくるべきね
そうそう、お握り持たせてもらったんだったわ
食べちゃおうかしら
つづく
コメント