彼らの旅 私の旅 SSTR2023始まる(創作です)

「こんばんは・・・」

「お、来たな。今夜も俺のおごり?」

「ちゃんと払うわよ。水と焼きそばでお願いします」

 

「おや、飲まないの?」

「お小遣い無くなるし。もうすぐ北海道じゃない!」

 

「しかたねーな・・・ジンソーダでどうだ、俺のおごり」

「やったー!!!さすがマスター。ほんといい男よね~」

 

「今日もぎりぎりで千里浜は晴れたわね」

「おー、そうだな。あの浜は特殊だよ。雨とか曇りかと思っても、夕陽の時間にはちゃんと晴れたりすることが多いんだ」

 

「すすきのさんは先週末、無事完走。夕陽も見れたし、反省会で大盛り上がりだったそうだ」

「もう何度目なのかしら、すすきのさん。何度参加してもやめられない楽しさがあるって言ってたわ」

 

「ヒーローさんは今日、無事完走したそうだ。出発は雨、ゴールは夕陽が見れたらしい。雨の日ってさ、かなり精神力が試されるんだよな。それも出発時の雨ってさ」

 

「そうね、行く先の希望が見えない気持ちになるわよね。でも結果良ければ万事OKよ。感動も倍増なんじゃないかしら」

 

「そういえば、常連さんの3人組はいつ出走なの?」

「参加は2人。今週末イベントのある日だそうだ」

「たしか、翌日もイベントの日なのよね」

 

「ああ、完走できるか不安だとも言ってたけど、すげー楽しみにしてるみたいよ」

「どこから出発するのかしら?」

 

「無難に地元からだそうだよ。新港のフェリー埠頭。とは言っても、そこから千里浜行くには高速使って7時間ちょい。下道だけで11時間ちょいかかる」

 

「宮城県の日の出が6時50分頃で、千里浜の日没が午後7時頃だから、約12時間か?」

「下道で順調に走れたとして、ぎりぎりな感じね」

 

「そう、走れなくはないギリな距離。彼ら初出走だから順調にいくとは思えないしな」

「そうなの?」

 

「普段から長距離のツーリングとかしないやつらだから、ちょっと心配なんだ」

「まあ、参加することに意義があるから、いい体験にはなるはずよ」

 

「ルートは?」

「Googleマップに従うらしいぜ。113号線で山形横切って新潟から海岸に沿って富山、石川。まあ、素直なルートではあるけどな」

 

「SSTRは参加しないと本当の感動は得られない気がする」

「だろうな。システムとかSNSとか現地のライブ動画見て応援してても興奮するけど、泣くほどの感動は参加者だけだろうな」

 

「いつか行ってみる?カモシカくんも」

「う~ん、時間に追われて走るのって性に合わないっていうか、焦りが出ると危険というか。下りカーブでクラッチ握りっぱなしになっちゃったり、シフトチェンジが変てこりんになっちゃたりするのよね」

 

「人間、焦ってもまたその先まで進むとさ、無意識に身体が勝手にうまい具合にバイク走らせたりするんだぜ、ほんと不思議なんだけどさ」

 

「あ、なんかわかる気もする。気づくとちゃんと目的地に着いてるけど、どうやって運転してきたか思い出せない時ってあるわよね。さっきの信号青だっけ、赤じゃなかったっけとか」

 

「俺たちの知らない身体の不思議ってのがあるんだろうな」

「そうね、人間て使ってない能力がまだまだたくさんあるらしいから」

 

「そういう意味ではバイクに乗るってのは、忘れてた何かを使うきっかけにはなるかな」

「そうね。乗らなければ使わない能力、けっこう使うものね」

 

「ごちそうさま。今日の焼きそばも不動の美味しさでした」

「え?もう帰るの?」

 

「うん、なんか眠くなってきちゃった」

「そっか、俺も早仕舞いするかな」

 

「じゃあ、またな。良く寝ろよ」

「ええ、またね。良く寝るわ」

 

つづく

 

 

 

 

コメント

タイトルとURLをコピーしました