「北海道、行けたらいいわね」
「そうだな、こういのはどうだ?」
マスターが言うには、行きか帰りのフェリーと旅の途中の宿一ヶ所を共通にして、あとは自由にそれぞれが旅をするという提案だ。
それ以外のそれぞれの旅の行程は明かさない。大抵どこかのスポットで誰かが誰かと出くわすだろう。それが北海道の旅の面白さなのだとも言っていた。
「ふーん、それ、いいかもね。片道はそれぞれ自由に決められるから、仕事や休暇の都合にも合わせられそう。どちらもダメなら、途中から参加して宿で合流とか」
考えれば考えるほど、楽しい計画に思えてくる。私にとっては、北海道ツーリングのリベンジだ。
そして、あの懐かしい留守番さんたちにも会えると思うとワクワクする。ハマさんにも会いに行こう。その時はW400とソーダ水の君も一緒だ。
しかし、西のライダーたちにとってはかなりの長距離になる。どんな行程で北海道まで走りぬくのかが気になる。
留守番の時のように、まずこの街まで来て、それからフェリーに乗り込んで北海道に上陸するのが無難だろうか。
日本海側を航行するフェリーもあるが、3日がかりだそうだ。勤め人にはその時間がもったいないだろう。
こうなったら、私のSNS繋がりのライダーも何名か誘ってしまおうか。餡子好きの四国の女性ライダーや、素晴らしい動画を撮り続けている関東のW乗りさんとか。
そうだ、W乗りさんに動画を撮ってもらってもいいかもしれない。空想の一人歩きが止まらない。2杯目のビールのほどよい酔いも回っている。
「どうしました?カモシカさん」
「え?」
ソーダ水の君に声をかけられ、我に返った。
「あ、北海道へ行く空想に浸ってしまってたの。もう、行くしかないわね」
「ええ、行きましょう、ぜひ」
「なんだ、なんだ、君たち、決断が早いな」
「きっかけはマスターじゃない。今更、私たちを止められないわ」
「そうだな、実現するかどうかは置いといて、この仮想計画をつぶやいてみるか」
「ええ、ぜひそうしてみて!カモシカが会いたがってるって付け加えてね」
「あ、そうなると留守番がいないですね、このお店の」
「まあ、なんとかなるだろう。休みにすればいいのさ。前回だって、実はほとんど儲け無しだからな」
「あ、ひどい・・・」
「冗談だよ、想定してたより実は儲けがあったんだ。留守番さんたちの料理の評判のおかげだな」
「そうそう、彼らの出費はどうなってるのか気になってたの。食材はみんな彼らが買ってくれたのよ」
「後日請求してくれって言ったんだけど、誰も請求してこない。その件もあってさ、北海道ツーリングで何かお礼出来たらいいなって、いま考えてた」
もう桜が咲き始めた。夏は遠いようで、もう目の前に近づいている。旅の計画を立てるなら、早いうちがいい。
フェリーの乗船予約も北海道の宿も、夏は予約が取りにくいと聞いている。この計画が実現するかどうかは、いまはまだ不透明だ。
全員参加が無理でも、マスターと私とソーダ水の君と、とんずらさんとK君、それだけでも5名になる。
オートバイの旅にしては、けっこうな人数だ。基本的に別行動とは言っても、集まるとそれなりに大人数に感じられるだろう。
さあ、新しい目標に向かって前進あるのみだ。仕事を頑張って、生活費を切り詰めて、旅の費用を貯めようか。
つづく
動画で北海道ツーリングの勉強しないと💦💦
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