名取川の河原(Aug 3, 2021)

 

人生最初のオートバイに、オフロードバイクを選んだのは、ちゃんとした最終目的があったからだ。

 

林道を走りたかったわけではなく、モトクロスをやりたかったわけでもない。

最終的に大型二輪免許を取得してハーレーに乗るためだった。

 

当時夢中になって読んでいた雑誌に、三好礼子だったかヒロコノのひろ子さんだったかが、書いていた。

オートバイの運転がうまくなりたかったらオフロードバイクに乗るといい、と。

片岡義男の書くことをいちいち真似したりしていた自分は、彼女たちの言葉にも素直に従った。

 

一台目に選んだのは、YAMAHAのDT-200。

モトクロスをやっているバイク屋を選んで買いに行ったら、お勧めのバイクがそれだった。

 

地方とはいえ、都会に住んでいた自分が一番困ったのは、身近なところに練習場所が無いことだ。

 

ある日、国道を走っていて見つけた河原で練習することにした。

大き目の岩や石がゴロゴロしていた。自信は無いけど、とにかく走ってみた。

 

そのうちぬかるみに後輪を取られ、抜け出そうとするほどにはまり込み、仕舞いにはオートバイだけで立つほどに完全に後輪が地面に入り込んでしまった。

力を込めて引っ張っても押しても倒そうとしてもダメだった。

 

携帯電話の無い時代のこと。バイクをそのままにして公衆電話を探しに行くか、どうしたものか。

途方に暮れていると、声がした。

 

遠くから見ていたのだと男性は言った。バードウォッチングをしていたのだそうだ。

「このあたりには野鳥の卵があるから、怒り心頭で見ていた」

「どうしようもない様子を見ていられなくて来た」

そう言った。

 

かなり真剣に怒られながらも、何とか助けてもらった。

その後、河原で練習することはやめた。

 

かなり昔のことだけど、憎むべき相手を良心で助けたその男性に敬意と感謝を。

 

★写真は、当時のもの。名取川の河原。ポジフィルムに光を当ててコンデジで撮ってみたら、こんなふうに写りました。使えますね。

 

 

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